本日は蔵書点検のおはなしです。
図書館の繁忙期(8、9月)を避けて「蔵書点検」というものをします。
図書館のカレンダーで年末年始でもないのに1週間ほど休館になっているときがありますよね?
それが蔵書点検の期間です。
1週間弱、図書館をお休みにし、図書館の中で図書館員たちはこっそり蔵書点検なる作業をしております。
では、休館の図書館の中で一体何が行われているのか、蔵書点検とはなんなのか、お話しします!
図書館が長期休館する蔵書点検とは
蔵書点検とは、
- 図書館の本やCDがきちんと図書館内にあるか、
- 日本十進分類法などに基づき正しく並べられているか、
- 壊れたりページがとれたりしている図書等はないか、
- 内容が古すぎて図書館に置いておくのにふさわしい図書か、
などなどの、図書館の蔵書の正しい所在や蔵書の現況を確かめる作業です。

十進分類法についてはこちら▼
【図書館の本の並べ方】図書館って本がどこにあるかわからない!図書館ってどうやって本を並べているの?図書館での本の並べ方を知ろう!
図書館用語については下記の記事をどうぞ▼
図書館用語を徹底解析!「ショカ」や「ショゾウ」ってなんだろう
利用者さんが来館されていると騒がしくなってしまいご迷惑をおかけしてしまうのと、図書館を少し止めさせていただき、実際にある本の冊数を確かめるために休館をいただいております。
毎年毎年ご迷惑をおかけいたします。
図書館の本やCDがきちんと図書館内にあるか
ではどうやって図書館にある何十万冊もの本やCDの数を数えるのか!
不思議に思うと思います。
蔵書点検のときはこのようなハンディターミナルを使い、1冊1冊本についているバーコードを読んでいくんです。
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(参考まで:実際に使っているハンディターミナルはこちらではありません。図書館ごとによって異なります。)
ですから、本1冊1冊についているバーコードの貼られている位置が全部一緒になっているんです。
↑こんな感じで左が背表紙の下にバーコードを貼るといったように図書館を建てる時に仕様を決めます。
あのバーコードの位置がバラバラになるだけで、
バーコードを1冊1冊探す手間が増えることによってバーコードを読み込むまでに時間がかかってしまうので、
いつもギリギリの時間で行なっている蔵書点検が終了しない可能性も出てきちゃうんです。
だからあの何の気なしに貼ってありそうなバーコードひとつでも、時短を狙っていたんですー!!
【図書館って本がどこにあるかわからない】図書館ってどうやって本を並べているの?人気順?あいうえお順?
いまは蔵書点検自体も進化していてICチップ等で貸し出し返却をしている図書館では、
板のようなものを本の並んでいる棚になぞらせるだけで終了してしまうものもあります。
(画像お借りしました)
上記写真のような機械で蔵書点検をする図書館さんもあるようです。
さっと本を本棚に沿ってなでるだけで蔵書点検が終了してしまうようです。
画期的ですよね。
ですから最先端の図書館では蔵書点検の期間が短いため、蔵書点検でお休みする期間が短かったり、むしろなかったりするんです。
図書館って毎週月曜日に休んだり午後5時までで閉まっちゃったりするイメージがまだ強いですが、努力してますよー✧
機械で読み込んだバーコードと所蔵データを照合することを蔵書点検といいます
上記写真の機械(バーコードリーダー等)で1冊1冊読み込んだ本に付いているバーコードを、
図書館にあるメインコンピューターの所蔵データと照合します。
所蔵データというのは、図書館が持っている本のデータのことです。
バーコードリーダー等で読み込んだバーコードをメインコンピュータに取り込むと、
メインコンピューターが
「あの本、ないよ」
「この本もないよ」
というデータを作成してくれますので、
✔︎本当にないのか、
✔︎バーコードを読み忘れたのか
など想像しながら、
データに従って人間の図書館員たちが本やらCDやらを探しに行くわけです。
薄い本が厚い本の間に隠れていて読み込み忘れてしまったり、
本棚の後ろに落ちていたりして読み込めなかった本を人力で捜索します。
この機械と人間の協力の上、蔵書点検はなりたっています。
機械ありがとうございます。
蔵書点検のゴールとは
データと本のあるなしを何回か人の目を変えて探します。
それでも本が見つからないときは、「行方不明」です。
蔵書点検で、毎年数冊の図書やCDが行方不明になっていることが判ります。これらについては再購入を検討します。
そう、蔵書点検のゴールは行方不明になっている図書館の資料がないか探すことなんです。
毎年何冊かの行方不明本は出てしまうので悲しいことですが、
ある日突然、返ってくることもあります。
また蔵書点検を行うことで本を綺麗にならべ直しますので、利用者さん達に図書館を快適に使っていただくためには欠かせないプロセスなんです。
蔵書点検は曝書(ばくしょ)とも言います
今は昔、和装本が主流の時代にまで遡ります。といっても、そんなに大昔ではないのですが。
図書館に限らず、本を所有している学校などでは、各々で作っている台帳に照らし合わせて本の所在を確認していました。
そして、紙を食べる害虫の紙魚(しみ)を追い出すために、持っている本を日光に曝す(さらす)という作業を行っていました。
こういった一連の行為を「書を日に曝す」ことから、曝書(ばくしょ)というようになったんです。
今では、虫干しそのものがあまり行われなくなったため、「曝書」は、休館して行う蔵書点検や大規模な書架整理のことを表す用語になっています。
紙を食べる害虫の紙魚(しみ)
さて、では上記に出てきた紙魚(しみ)とは一体どんな虫なのでしょうか?
一般的に名前は知られていませんが、日常生活でお目にかかっていることもしばしばあります。
体形が魚に似ていて、紙を食べてしまうため「紙魚」や「衣魚」とも呼ばれています。
銀色の鱗のようなもので体が覆われていてキラキラ光ることから「雲母虫(きららむし)」「きらむし」「箔虫(はくむし)」等と呼ばれたりすることもあり、欧米では「silverfish(シルバーフィッシュ)」という名前がついています。
紙魚の発生は3億年以上前と推定されていて、なんとゴキブリより古い時代の生き物になりますが、形態は今とほとんど変わっていません。
その訳は、約1年、何も食べなくても生きていられるからすごいですよね!!
日に本を曝すことがなくなってしまったのは図書館の環境自体が本の保存に配慮した設計になったから
今でも紙魚が生息しているのであれば、なぜ、本を日に曝すことがなくなってしまったのかというと、
「図書館の環境自体が本の保存に配慮した設計になってきている」というところだと思います。
一番紙魚の出そうな「書庫」では、「湿度管理機」を置き本に優しい湿度を保つようにしていますし、「開架」では図書館の構造上、以前より虫やカビの入らないものになっています。
そのため、日に本を曝さなくても良くなってきているんです。
機械の力は素晴らしいです!!
本を最適に保存できる空間
研究によって多少の違いはありますが、
書庫の温度は、18~22°Cを推奨しているところが多いです。
また、湿度は 40~60%が推奨されている。
60%を超えるとカビが発生しやすくなり40%以下では資料が壊れやすくなってしまうからです。
おうちでできる簡単曝書
もしこの記事を読んでくださりご自宅でも曝書がしたいという方がいらっしゃいましたら下記の方法をお試しください。
本につく虫は「湿気」と「ホコリ」が大好きなのでそれを取り去る方法です。
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こまめな掃除をして清潔な部屋を心がける。
はい。至って普通のことです。
上記でもお伝えしましたが、本につく虫は「湿気」と「ホコリ」が大好物。
ですので、お部屋の空気を定期的に入れ替え「湿気」を取り去り、掃除をし「ホコリ」を除去します。
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日に曝して紙魚を追い出す
曝書に適しているのは、
9月から11月のカラッと晴れた日の午前11時頃から午後3時頃までの時間帯です。
9月から11月のカラッと晴れた日の午前11時頃から午後3時頃までの時間帯に、
風通しの良い日陰か、直射日光の当たらない屋内で行いましょう。
本自体は縦に立ててページを広げたまま、何時間かそのまま置いておいてください。
たったそれだけのことで、「曝書」ができちゃいました。
どうぞお試しくださいね。
蔵書点検は図書館を1週間ほど休館にして世間でいう「棚卸し」をします。休んでいるように見える図書館で行われている蔵書点検とは まとめ
さてさて、多くの方には、休んでいるように見える蔵書点検期間の全容はいかがだったでしょうか?
図書館は土日も開いてるから、蔵書点検期間が連休なんでしょう?と思われていた方の謎が解けましたでしょうか?
図書館の蔵書点検明けはどの図書館も棚に入った本が素晴らしく綺麗に並んでいます。
その綺麗に並んだ棚を目当てに来館くださる利用者もいらっしゃいます。
どうぞ、長い蔵書点検での休館ではありますが、そんなことやってたんだーと長い目で見てやってくださいね。
お読みくださりありがとうございました。